2008年 06月 16日
20世紀も押し迫った頃、何の前触れもなくそのプロジェクトはベールを脱ぎました。 ピンワークス。それまでのピンの提唱してきたものを考えると、そのプロジェクトの内容は 180度転換とは言わないまでも、かなり異彩を放っていました。 「特注でグリップやシャフトをチョイスできるように、多くのメーカーの市販モデルに対応する」 「リィーディングエッジやバウンスのカスタムグラインドを受ける」 これらはベストと信じるものをゴルファーに提案する、という頑固なピンイズムからは ちょっと考えられないぐらいの柔軟な対応でした。 実際、それまでに何度もあったこの手の特注バナシ(それもかなりオイシイ)をにべもなく 蹴ってきたのを目の当たりにしている側からすれば、狐につままれた気がきました。 カタログ、というよりプロモーションツールのような最初の冊子は、簡単には開かないように 帯が巻いてあったりなんかメタリック調で重たかったりと、それなりに訳アリっぽい作りでした。 ピンはもともと自社生産の比重が高いメーカーだったので、本当は特注に対しては小回りが利きます。 機能や品質に影響を及ぼさない範囲での特注、例えばキャリーバッグのカスタムカラーや エッチングによるパターヘッドへのロゴ入れなどは他メーカーよりも強かったです。 ただし、クラブのコンセプトそのものに関わる変更などは別の話です。 それゆえ、ピンが作ったこのWrxという部門はまさに世紀末のあだ花のような扱いでした。 それから10年。ピンワークスは今でも健在です。もっとも、ピン本体がシャフトや グリップ、ヘッド仕上げなどのバリエーションを増やしているので今ではピン自体が Wrxのようになっている感がありますが。 選択肢が増える、というのはユーザーにとっては良い事なのでしょう、多分。 ただ、どこかに「ここの部分は作り手として断じて譲らないぞ」という拘りが 少なくなってしまっているようなのはちょっと寂しい気がします。 他方、選択肢が増えるという事は同時にユーザーに対峙する小売り側にも正確な 知識と情報のアップデートが要求されます。日本におけるピンの弱みでもある 「扱うのが面倒くさい」=小売りの面が広がらない=ユーザーに不便、という負の連鎖 は選択肢が広がる事でよりシビアな問題になりがちです。 ユーザー側もショップ選びから始めて正しい知識のあるお店と付き合う手間は要求されますね。
by greishi_7146
| 2008-06-16 16:22
| PING OTHERS
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